高齢化の波を受け、医療機関を受診する人々は、高齢者、要介護者などが増加しています。社会的にも、在宅思考が高まり、人の介護や社会的サービスを受けながら自宅での生活を続けている高齢者が増えています。
加齢による認知力低下や、疾患の後遺症による脳機能障害などで、認知症を患う高齢者が増加の一途をたどっています。
認知症高齢者を介護する家族の大変さは多大なものですが、自分の親や、自分の親族が「認知症になるはずが無い」と受けとめられない家族や関係者が、その介護に悲鳴を上げています。
認知症と受けとめられたら、介護も生活もぐっと楽になることがあります。
認知症を認められない家族支援について考えます。
認知症高齢者の家族の心境
「物忘れがひどい」「なぜできないのか」「分かっていない」「どうして伝わらないのか」と、日々関わっていると、その異変に気付きます。
しかし、自分の親たちの威厳やイメージから、異変を感じつつも受けとめられない家族の方が多くいます。
医療機関の関係者も、唐突には伝えませんが、やんわりと物忘れや出来ないことが増えていると伝えると、激怒されたり、心外だと憤慨されるケースもあります。
・認知症受容過程
- 戸惑い・ショック
その行動や言動、様子を見て、「実は認知症なのでは」と感じた時、動揺し、戸惑いを生じます。
- 否認・抑鬱
そんなはずがないと拒否反応を示します。
周囲から、「最近、お母さんおかしいね」「物忘れがひどい」などと指摘を受けると、「ちょっとつかれているだけ」「そんなことないよ」と対応します。
しかし、自分の心境では「やっぱり」とがっかりし、うつ傾向、思い悩むようになります。
この状況が続くと、介護介入が遅くなり、家族の負担が増えたり、認知症高齢者に必要な対応がなされず、心理的に傷つけてしまったり、必要支援が得られず苦痛や悲痛を与えることとなります。
此処を乗り越えると、お互いの生活がぐっと楽になります。
- 割り切り・あきらめ→受容
周囲の意見を聞いたり、その高齢者を見て「やっぱり出来ないことが増えている」などと受けとめられると、「年だし仕方ないか」と言う捉え方になります。そうなると、必要な社会支援を考えたり、その手続き等に前向きになり、介護負担軽減や高齢者への介護介入が出来ます。介護者も要介護者も自分らしい生活を取り戻せる支援、サービスで幸せを取り戻せます。
家族支援
なかなか受けとめられない家族に対し、「認知症です」とこちらから積極的に受けとめるよう関わることは、信頼関係にひびを生じたり、対話拒否の原因となり、良い関係を構築できません。
家族の思いや意見を充分に聞き、受けとめながらカウンセリング手法で、コミュニケーションが必要です。
今まで、自分たちを支えてくれた親が、親族が人として当たり前にしていたことが徐々に出来なくなる事のショックを自分の身に変えて考え、共感、傾聴姿勢で関わることが大切です。
まとめ
認知症患者さんの介護は大変です。
しかし、身内が認知症と受けとめることも大変です。
デリケートな問題な事ゆえに、介入には神経を使います。
看護師として、その方のこれまでの生活や役割を充分に知った上で、家族も本人も幸せな残りの時間が過ごせるよう支えていく気持が大切です。