今の医療現場の主体は、高齢者と言っても過言ではありません。
内科、外科、整形外科、脳神経外科などその病院の待合室、病棟を見ても、高齢者ばかりです。
高齢者は、加齢による身体的機能の低下や認知力の低下により病院を訪れます。
また、身体の疾患を持ち、認知症を患う患者さんが増えています。
このような複雑な患者さんに対応する力を身につけることは必須と言えます。
では、看護師として、認知症高齢者関わるコツを学びましょう。
認知症ケアの基本
・信頼関係とは
認知症初期、本人は「最近○○が出来なくなってきた」「物忘れがひどくなった」「あれ?どうするんだったか」などと、忘れている事や、出来なくなった事を認識し始めます。
しかし、出来ないと言えない、忘れたと言いにくい、認知症と思われたくない等との思いから、それを隠そうとします。
そこで、看護師や医療職者、家族や親類等の対応が、その方の尊厳を無視して「出来ない」「ボケている」「何やっているの」「とろくさい」などと言う対応を取れば、心を閉ざし、信頼関係を崩壊させ、高齢者鬱や認知症の進行を早めることとなり、良い影響はありません。
認知症や物忘れを感じ始めた高齢者は、実は助けを求め、どうすればよいかわからないことへの関与を願っています。そんな時に、さりげなく「こうしますか?」「こうしましょう」などと優しく声をかけられれば、安心感と、喜びを感じます。
その人に、心を寄せ、信頼を寄せるようになります。
このような信頼関係の構築が、認知症高齢者と関わるために最も重要と言えます。
何故、信頼が大切か
認知症高齢者は、信頼出来ない人の支援やサポートを嫌います。
被害妄想や、物取られ妄想などの症状を有する事、疑心暗鬼になっている事もあり、人への抵抗や疑いの目が強くなっています。
よって、関わられる人が自分にとって「害」ではないか「不快」を与える人間でないかと言う事を考え、一線を引きます。
一度失った信頼は、いくら認知症で忘れやすくても、「嫌」だった印象は脳裏に残ります。よって、その人からの言葉掛けやケア、支援の拒否に至る事もあります。
もし、自分にとってとても気持ちいい、喜びある対応が出来る人であれば、自ら寄って、安心できる拠り所として身を預けます。
親子でも、他人でも、自分にとって「善」か「悪」かで、受け入れの状況が変わります。
怒る事
出来ない事、忘れた事を怒りたくなる介護者や看護者は多くいます。
介護者や看護者も、感情を持った人間です。
しかし、認知症高齢者を叱ることは、全く良い影響を与えません。
出来ない事を認識している場合は、自尊心を傷つけ、悲しみを与えます。
認識出来なくなっている場合は、怒られている理由が分からない、怒っている人の怖さが強く印象に残り、幻覚や幻聴、妄想や夜間せん妄の症状の原因ともなります。
認知症高齢者にストレスを与えることは、認知症自体を進行させたり、精神状態を不安定化させる、問題行動を引き起こす原因となります。
よって、その人が行う行動の意味を考え、受けとめ、冷静に対処する必要があります。
問題行動には、意味があります。
おむつを外すことは排泄により気持ち悪かった場合、徘徊は不安や恐怖によるもの、何でも口に入れる時は空腹や口渇などが背景にある事があります。急に怒る、当たられる場合もあります。
このような時の前後関係や背景を考慮し、何故その行動に至ったか、「怒る」より先に「考える」姿勢が必要です。
まとめ
認知症高齢者は、物忘れや失認、失行などを引き起こします。
しかし、その人にも尊厳や人権があります。
プライドもあります。
その人を傷つけない思いやりが大切です。
人生の先輩の最期の時間を充実させ、安心感と安らぎある時間にできることが周囲サポートとして大切です。